鹿のいほり

漫画の感想など

梶本レイカ「悪魔を憐れむ歌」感想 息切れしながら読みました

コオリオニに続き今回も道警が舞台。

梶本先生作品の影響で私の中の北海道のイメージがとんでもないことに…。

未だコオリオニの衝撃から抜け出せていない自分にとってはなんだか鬼戸や八敷がひょっこり登場するんじゃないかと思わずにはいられませんでした。

今作も読むとなかなか日常に戻ってこられない強烈な漫画です。

 

 

以下ネタバレ注意

悪魔を憐れむ歌 1巻 (バンチコミックス)

悪魔を憐れむ歌 1巻 (バンチコミックス)

 

 北海道警の刑事・阿久津亮平は8年前に起こった「箱折連続殺人事件」を追っていた。周囲の呆れ顔をよそに熱心に捜査をする中、知り合ったのが咽喉科医・四鐘彰久。静かな佇まいの有能な医師で、協力を約束してくれた。一方、道警内部の軋轢に苦悩する阿久津…そして、実は四鐘こそ「箱折犯」その人だった――!! 血と暴力と追憶に彩られた黙示録クライムスサスペンス、ここに開幕!!

 

表紙の悪魔のような男、というか自称「悪魔」で「地獄」の四鐘彰久という美人な咽頭科医こそが箱折り犯その人であり、お気に入りのオペラにのせて人骨をボッキボキに折るのは目的ではなくあくまでも過程だとするザ・サイコパスです。

 

この四鐘センセがもう可愛くて素敵で…梶本先生はサイコパスをチャーミングに描くのが上手すぎる。

この繊細そうな見た目、おちゃめな性格、妙に心を掴まれる彼なりのポリシーや美学のせいでどんなに残忍非道なことをしていてもどうしても憎めないし、彼の美学を理解してみたいという危険な考えにまで及んでしまうような不思議な魅力があります。

四鐘というのは偽名で本名はミハイル=ハーマンというらしいですが、年齢も謎に10歳もサバ読んでたし気分で名前や年齢変えてそうなのでどの情報が本当なのか分かったものじゃありません。

 

そしてこの箱折り犯を一人で追い続ける刑事の阿久津が捜査のために四鐘先生のクリニックを訪ねて2人は出会います。

四鐘先生が何を考えて何を成そうとしているのかはさっぱりですが、とりあえず阿久津との出会いが先生の内なるものを最高に掻き立てたことは分かりました。

名刺の匂い嗅いでましたからね。危なすぎる。

先生にとって阿久津は「完璧」であり「私がお前のメフィストーフェレ」なんだそうです。

宣伝文によると「その出会いこそが血と暴力と謎に満ちた驚愕のサスペンスの幕開けだった―!」

との事なので、ここから事件解決に向けて阿久津が奔走する展開ではなさそうでますます続きが気になります。

 

このメイン2人の唯一無二の存在に出会ってしまった感じや会話の色っぽさ、かけ合いのお茶目さを見ているとやっぱりどうしてもそういうアレを期待してしまうんですが、そこは一般誌ということで自分を戒めつつ…

でもこういう当てはまる言葉がないけど確実に互いを強烈に意識してる関係、滾る。

 

人物のことばかり書いてますがこの漫画はストーリーが本当に面白い。

ただ凶悪な箱折り犯とそれを捕まえんとする刑事の図だけでなく、婦女暴行犯、不祥事をもみ消そうとする道警内の圧力、箱折り事件について何やらほかにも隠しておきたいことがある様子の警察の上の人間...

と一体どれだけの悪が存在してるんだというくらい悪が渦巻いてます。

不祥事というのは8年前に箱折り事件の容疑者として身内の警官を冤罪で捕まえたもので、この事実がバレないよう道警全体で事件そのものを無かったことにしようとするんですね。

なので警察内の上の人間は箱折り犯をいつまでも追い続けている阿久津を邪魔な存在だと思っていて、口を開けば「あの事件は終わったんだ」と相手にもしない。

犯人に仕立て上げられてしまったカガミという男は阿久津の同期で、カガミのためにも阿久津は箱折り犯を絶対に捕まえようと決めている。

カガミは度重なる尋問のせいで今は精神病棟に入院しており、阿久津が見舞いにくると子供のように喜ぶ...というシーンがあるんですが、うまく言えませんが自分はこういうものを見たいがために梶本先生の作品を読んでいる気がします。(まだコオリオニだけですが)

片方が相手に依存していて他方もそれを受け入れてるけどどこか冷めていて熱量が同じじゃない感じ...

自分が満たされていない人ばかりなので人に優しくとか読んでいてあったかい気持ちになるようなハートフルな人間関係が存在しないんです。

カガミのために箱折り犯を捕まえてやると言ってはいますが阿久津も決して善人に描かれてるわけじゃないんですよね。

正義vs悪ではなく、自分なりの正義を持った悪がひしめき合う中で悪そのものを解剖しているように思えます。

四鐘先生が言った

「悪とは単なる善意の不在かな?」

「純粋な正義と無償の悪の違いとは?」

この台詞こそが今作のテーマだと思わずにはいられません。

 

それにしてもこの事件を蒸し返そうとするとお偉い方があまりにも大慌てなのが怪しすぎますね…

隠したいことは冤罪の件だけじゃないんでしょうたぶん。

こういういろんな謎とか伏線がゴロゴロ転がっていて、先は気になるし読めば読むほど新しいことに気づくので思わず深読みしすぎている自分がいます。

 

 

四鐘先生は自分が出した犠牲者の無残な死体写真を見せられても白々しく乙女なリアクションをとっていたり、普段も飄々とした立ち居振る舞いなんですが、阿久津が箱折り犯を捕まえたいと語った時の先生の表情…作中で唯一素が出ていたように感じたんですが、あの時の感情がすごく気になります。

ちょっと驚いているようにも見えたので阿久津がイキイキと箱折り犯の存在を証明したいと話すのにびっくりしたのかな?

捕まえて罰を受けさせてやりたいとかでなくこういう台詞が出たこと自体に驚いたのかもしれない。

長年自分のしたことが無かったことにされていた彼的には箱折り犯=自分だと証明してくれる奴が現れたとますます阿久津への期待が高まった瞬間だったことでしょう。

 

…と色々考えさせられる漫画ですが毎回四鐘先生の肉体(半裸)を見て全てが吹っ飛びます。

病院にいるときの華奢な印象のインテリ先生とのギャップよ…。

やっぱり簡単そうにポキポキ折り畳んでるけど人の関節をあれだけ綺麗に逆に折るって相当な力がいるんだろうなあ。

死んだ状態ならまだしも生きてますからね。

これから一体何人の犠牲が出るのやら…

神の子羊ミハイル=ハーマン50歳の動向に目が離せません。

 

 悪魔を憐れむ歌は読んでいて色んなものが削られていくのを感じてとにかく消耗しました。

梶本先生は無事なんだろうかと思うくらい。

そんな梶本先生の今作のあとがきを読んで大変感銘を受け、ますますこの作品が好きになりました。

日常の苦痛を感じることが許されない中で、せめて漫画の中だけは苦しみを謳歌できるようにとあらゆる痛みを我々に提供してくれる梶本先生の作品は、ほかの漫画を読んでいるときとは違うものが分泌されているような感覚です。

 

この悪魔を憐れむ歌でもうそれはそれはばっちり痛みを謳歌させてもらったのであとは次巻までにゆっくり咀嚼しようと思います。

 

悪魔を憐れむ歌 1巻 (バンチコミックス)

悪魔を憐れむ歌 1巻 (バンチコミックス)

 

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中村明日美子 「ダブルミンツ」 番外編 感想 耽美なJKに見惚れる

OPERA vol.62に掲載されているダブルミンツの番外編を読んだのでちょろっと感想。

 

 以下ネタバレ注意。

OPERA vol.62 (EDGE COMIX)

OPERA vol.62 (EDGE COMIX)

 

 

「女子高生は好きか?」

という佐伯さんの台詞で始まるこの番外編。

そしてこのJKというのはもちろんヤクザの娘。つまりお嬢。

中村明日美子先生の描く女子は最高ですが、このお嬢も極上のエロス溢れる雰囲気のある子で、ドンペリ飲みながらパンケーキ食べてついでにハッパスースーしちゃうような子でもあり…。

BLに登場する女子は邪魔者扱いされるのが常ですが、このJKがものすごく良い仕事をしてくれていて、話をダークな方向に面白くしながら主人公2人の間に漂うなんとも言えない空気感を第三者的目線で味わわせてくれるという…素晴らしき女子でした。

 

私は明日美子先生が描かれる食事シーンの美術品のような美しさにいつも見とれてしまうんですが...例えば

ダブルミンツ本編ではミツオが「断髪式」のDVDを見ながら桃を食べるシーン。

同級生シリーズはハラセンが佐条に目玉焼きだったかな?を妄想の中で食べさせるシーン。

 もう本当に息を呑む美しさというか、あれ、桃とか目玉焼きってこんなに卑猥な食べ物だったか…?

と感じるような明日美子先生ミラクル…。

今回もばっちり自分の知っているパンケーキとは違う物に見えてハラハラしました。

 

あとはやっぱり「目」ですね。

あの三白眼の妖しい視線にものすごくドキッとさせられました。

みつおがラリってお嬢とキスするのを黙って見つめるミツオの視線。

キスをしながらミツオの様子を盗み見て2人の恋人でも友達でもない不思議な関係を探ろうとするお嬢の視線。

ちょっと普通じゃない人の目だよこれは…

ミツオとお嬢ってちょっと似てるかもなあとか思ってしまった。

作中でみつおのちょっと人間らしさを感じられる台詞があり、ミツオのみつおへの愛がひしひしと伝わってくる素敵な台詞あり、ラストはふふっと笑えるダブルミンツらしい終わり方でした。

 

 

ダブルミンツが実写映画化されると知ったときに、ついにblの、しかもこういうタイプの作品が映画になっちゃうのか~と思って自分は原作だけで十分かなという感じだったんですよね。

また同級生みたいにアニメ映画化ってわけにはいかんのだろうか...って気持ちもあったし...

でも今回のOPERAの特集で監督の方とみつお役の田中さん、明日美子先生、トウテムポール先生の対談が載っていて、それを読んだら作り手の作品への愛がもうバシバシ伝わってきました。

特に田中さんはあの華奢なみつおの身体になりきるために周りに心配されるほど痩せて、服装や歩き方まで意識して1年かけて役作りをされたとのこと。

なるほど映画のトレーラーを見てきましたが見た目だけでなく仕草や視線の動かし方までみつおそのものだ...!

 

脚本を明日美子先生が手直しされている画像もあったんですが、これがかなりの辛口でこのキャラはこんなこと言わないとかこういうシーンは不要とか...

確かに修正前のものが映像化されていたらファンは間違いなく劇場で困惑していたと思うので先生の希望にすり寄せてくれて本当に良かった。

 

映画ダブルミンツ、かなり期待できそうで楽しみです。

 

ダブルミンツ (EDGE COMIX)

ダブルミンツ (EDGE COMIX)

 

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「アオアシ」作者・小林有吾先生のサイン会に行ってまいりました

う~~ん迷ったんですけどサイン会の興奮が冷めやらないうちに書き留めておこうと思います。

5月13日、大好きな漫画「アオアシ」の作者・小林有吾先生のサイン会に行ってきました。

ド田舎者のサイン会初参加ということで色々分からないことをネットで調べ、前日のラジオを聴き士気を高めて横浜へ。

整理券を受け取りに行ったら44番で15時にコミック王国様に集合とのことだったので色々散策しつつ...張り切りすぎて14時半過ぎに向かったらまだ前の回の集合時間でした。

15時になるまでコミック売り場をぶらぶらしていたんですが、都会の本屋さんてあんなに超有名作家様たちのサインがわんさかあるんですね...

右を見ても左を見てもサイン色紙や素敵なイラストだらけだったので思わず見入ってしまいました。

時間に近づくとアオアシを手に持った人達がどこからともなくわらわらと集まってくるのがなんだか異様な光景だった。

 

全体の参加者を見ていないので定かではありませんが、やはり男性が多かったですね。

男女比は7:3くらいでしょうか。いや8:2くらいかもしれない。

幅広い年齢の方がいらしてました。

いよいよ整列。幕の向こうから先生のお声が聞こえてくる...!

最初あまりに気さくな感じに聞こえたのでスタッフの方かな?と思う程でした。

参加者の方はアオアシ9巻を読みながら漏れ聞こえる会話に聞き耳を立てていたことでしょう...

自分は左耳の聴力を最大限に使って聞いてました。

 

ついに自分の番がきて、中に入ると、爽やかさを具現化したような素敵な笑顔の先生が...!

あの、なんだろう、爽やかすぎてなんだか周りに風が吹いてそうな方でした。

サインと、なんと好きなキャラまで描いてくださるとのことで、私は橘にしてもらいました。

その時点では橘初描きだったそうでちょっと意外。私も随分迷ったんですよね~。

やはりここは主人公にしてもらうべきかとか、9巻のちびっこバージョンも可愛かったし、Aチームの桐木くんも気になってるしなあ~と。

でも流石にね、まだほぼ喋ってないキャラはね...

その事を伝えると、ちょっと驚かれた後「あいつは多分出来る奴」とのことでしたw

まあだからAチームなんでしょうけどね。

 

サインに名前を書いてもらうときに私の漢字が常用漢字ではないので「間違えないようにしなきゃ」と字をよーく見て書いてくださっていたのがとても印象的でした。なんて良い方...!

イラストの橘はトレンドマークの太眉が最高にチャーミングでなんだか余所行きの笑顔をしており、いつもより2割増くらいイケメンな気が...

 
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お手紙と、かさばるといけないと思って大分寂しい感じになってしまった地元のお土産を渡して...

そして最後に握手まで...!

ああ~なんて日でしょう!

 

↓こんなかんじ

 

はあ~~~もうとにかく贅沢な一日でした。

サイン会ってすごいですね。アオアシがもっともっと好きになりました。

わざわざ関東まで来てくださったお陰で参加でき、もう感謝しかありません。

大勢の初対面の人と会話をしながらサインを描くってもうものすごく疲れることだと思います。本当にお疲れ様でした。

 

小林先生、スタッフの皆様方ステキな時間をどうもありがとうございました!

 

アオアシ(1) (ビッグコミックス)

アオアシ(1) (ビッグコミックス)

 

小林有吾「アオアシ」 9巻 感想 ちびペリオンが可愛い。武蔵野戦開幕

橘が望コーチに自分を試合に出さないようにと直談判したり、富樫と竹島との確執があったりと不穏な空気が立ち込めはじめていた8巻。

9巻はそんな雰囲気が続きつつも、エスペリオンズの可愛い(?)過去編があったり新たな女子キャラが登場したりと試合以外での動きのある巻でした。

 

以下ネタバレ注意

 

アオアシ 9 (ビッグコミックス)

アオアシ 9 (ビッグコミックス)

 

 

9巻のメインは何と言っても富樫の過去編。エスぺリオンに入団した時からユース生を毛嫌いしていた理由が明かされました。

どうやら小6のとき富樫はジュニアユースの練習に少しだけ参加していたようです。

そこで富樫の「勝つためのサッカー」と、ユース生の「プロになるためのサッカー」

この2つが全く噛み合わず、互いを理解もできずに衝突。

富樫曰くアカデミー育ちのサッカーは「ケガをしない、プロになる、試合に勝つ」という優先順位を無意識に付けており、差し引きをしながらサッカーをやっている。そういうやつは生きるか死ぬかの試合で役に立たないという主張。

 

対して黒田・竹島を始めとするユース生側はプロになりたいと思って何が悪い、自分たちは人生が掛かってるからプロになれなければそこで終わりだと言う。

多分ユース生は元々才能お化けの集まりだから冨樫のいう「生きるか死ぬかの試合」がピンとこないんでしょうね。

そういう大事な試合の局面でユース生とそれ以外の選手の温度の差が露呈して「ユースはメンタルが弱い」と言われるんじゃなかろうか。

 

いやでも、やっぱりみんな小さい頃からレベルの高いサッカーやってたんだなあ。

小6で、自分たちがサッカーをやる上での意識の違いで争いになるって正直すごい。

上達していく子は考えながらプレーしてるんだなあと。アオアシを読んでいると何も考えずにぽけ~っとやっていた自分の部活時代が悔やまれてなりません。

 

ともあれ富樫がユース生を毛嫌いしている理由が黒田や竹島から陰湿な嫌がらせを受けたからとかでなく良かった。

みんなサッカーに対する思いが強いが故にこれだけは譲れないというポリシーを自分の中に持っていて、その方向性の違いからぶつかり合っただけなんだろうな。

でもこういうどちらかが悪い訳じゃない揉め事ってなかなか解決が難しかったりするんですよね...。だからここまでお互い触れずにズルズル来てしまったんでしょう。

 

アオアシ 9 (ビッグコミックス)

アオアシ 9 (ビッグコミックス)

 

今回は栗林や阿久津といったAチームのメンバーが登場せず、Bチームの微妙な人間関係がまるっと1巻分描かれていたので10巻での武蔵野戦がより濃いものになりそうです。

今まではガッツリ葦人の成長を見守っていける試合内容でしたが他のメンバーの爆発的プレーも見られそうでさらに面白くなる予感。

 

関係ないですがアオアシで葦人がなにかの気配を感じてゾッワアアアって鳥肌恐怖すると必ず阿久津渚が来た!と条件反射で思ってしまうんですけど、今回は違いました。

花ちゃんが葦人の尻をまさぐっただけでした。(物理)

 

2人の関係は葦人が天然くるくるパーなせいでなかなか進展しないので…

花ちゃんは栗林くんにせっせと献立作って葦人を嫉妬させてサッカーどころじゃなくしてやればいいよ。

 

そんな二人を生温かい目で見つめる大友も大活躍でした。主に顔芸で。

いつもちゃっかりコマの隅っこで面白顔をしているので大友を探すのも楽しみの一つだったりします。チームが重い空気のとき彼がいてくれるととても和む…

 

そして今回冨樫と並んでスポットが当てられていたキャラが竹島

竹島は練習場に彼女を連れてきたり自称「プライベートとサッカーを完全に切り離しているタイプ」で、流石に才能ある子はクールだなあと思ってましたが、今回は髪型も大胆チェンジして何かに目覚めた感じでした。

というか竹島って赤髪だったんですね。実に赤髪リーゼントらしい気合の入れ方だ。

 

葦人以外のキャラが目立った9巻でしたが、武蔵野戦は「試合の働きいかんでAチーム入りを判断する」と福田監督に言われているので 葦人にとってもめちゃくちゃ大事な試合。

ちょっと色んなキャラの進化の予感をビシビシ感じているので...一体どうなるんだ武蔵野戦。

葦人の司令塔としての活躍が待ち遠しいです。

 

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あげくの果てのカノン 3巻 変わっていく人。変わって欲しくない人。変わっても好きな人。

3巻も面白さにのめり込んでしまいあっという間に読了。

1・2巻では腹の探り合いというかキャラクターが今いち本音を見せてくれませんでしたが、3巻では宗介、初穂、ヒロがそれぞれ自分の気持ちを語ってくれていてとてもスッキリしました。 

 

あげくの果てのカノン 3 (ビッグコミックス)

あげくの果てのカノン 3 (ビッグコミックス)

 

 

話は宗介目線で始まり、かのんの収集癖はやはりと言うべきか、バレちゃってました。

宗介は学生時代から「好きなら何をしても良い」と思っているかのんを始めとする周りの存在を迷惑だと感じていたよう。

宗介とかのんが初めてけんかをするシーンでかのんの行為が気持ち悪い、重いとはっきり言ってしまう宗介に対し、かのんが今まで優しくて穏やかで神のような存在だと崇めていた先輩が完璧ではないと知り、ますます先輩最高!になる辺り、重症です。

初穂にとってはさあお互いの汚い部分を見せ合って喧嘩して来なさい、というつもりで宗介をケーキ屋に行かせたのに駆け落ち展開になってしまうとは...

これで宗介の今まで未遂で終わってきた恋愛感情とは明らかに違うということが初穂にも分かってしまいました。

宗介は自分の言葉に一喜一憂する従順なところが気に入ってかのんに近づいて行ったと思っていたのに。

期待させるだけ期待させて傷つけられたと怒って訴えてくるかのんの事を面倒になって捨てるだろうと予測していたのに。

結局自分のところへは戻ってこなかった。

しかもそれを仕向けたのは自分だとなると飼いゼリーを脱走させるほどの精神崩壊するわけだ...

あげくの果てのカノン 3 (ビッグコミックス)

あげくの果てのカノン 3 (ビッグコミックス)

 

変わっていく宗介。初穂は宗介が変わらないようにと、「宗介のため」としつつゼリーの研究をしている。周囲もそれを「愛の力」なんて言って囃し立てる。そういうのが宗介は疲れちゃったのかな。

そこで自分に対し「変わっていく自分も受け入れてほしい」と言ってくれるかのんが目の前に現れる。ゼリーと闘って行くためには修繕で人格や好きなものが変わることは避けられない。知らない自分ができていくことに恐怖を感じつつも、かのんのようにそういう自分も丸ごと受容してくれる存在はすごく彼の心の支えになったのかもしれない。

 

弟くんもついにかのんに告白。鈍感そうなのに本当はヒロの気持ちに気づいてたというかのんの独白にはちょっと意外。ヒロの一世一代の告白なのに内心先輩以外の人に好かれても。。。と感じているかのんにますます闇を感じました。

先輩へのストーカー行為の日々で弟以外の家族との触れ合い描写全くなかったと思いますが今回はラストにお母さんが登場。「今」じゃない別のところばかり見てないで私たちとの生活も大事にして...!という母の言葉を聞き、自分のせいで色んなものを壊してしまったと涙ながらに気づくかのん...で今巻は終わりました。

 

 

宗介が自分の弱い部分をかのんに見せ始めていてすごく人間ぽさを感じて良かったです。宗介の変化に対するかのん、初穂の対比と、ヒロの姉を救い出したいという気持ち、母の自分たちとの今の生活をもっと大事にして欲しいという思いが交錯していてとっても面白かった。

 

4巻の予告で「境さん...気持ち悪い...」という誰かの台詞と、「変わりゆく境。その姿はもう...」という煽りがあるんですけどこれは...

 

境先輩にぐちゃぐちゃになって欲しいという黒い気持ちと変わらずにいてほしいという思いが自分の中で闘ってます。

次巻は冬か。長い...

 

 

 

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米代恭「あげくの果てのカノン」 1・2巻 感想

不倫もSFも普段自分から手を出さないジャンルなのに「SF×不倫」と書かれた帯を見たら無性に内容が気になるじゃないか…。

というわけで米代恭先生の「あげくの果てのカノン」を読んだので感想書きます。

 

以下ネタバレ注意

あげくの果てのカノン(1) (ビッグコミックス)

あげくの果てのカノン(1) (ビッグコミックス)

 

 

ゼリー(エイリアン)襲来によって 都市機能を失った東京・永田町。
高月かのん(23歳)は、高校時代から8年間、
一方的に大好きな境先輩への片想いをこじらせ、
崇拝の域に達している。

先輩以外を好きになったことがない高月にとって、
先輩との時間は、初めてのことだらけ。

触ること、
見つめること、
そして…

でも、いけない。
この「恋」を進めると、「罰」を受ける。
だって、先輩は他の人のもので、この世界のヒーローだから。

 

 

まず主人公のかのん。堺先輩が好きで好きでどうしようもなくて盗撮写真をスクラップしたり会えた日は声を録音したり、それを家で聴いて涙が滲んできちゃうくらいのメンヘラ女子。

好きの気持ちが強すぎて完全に一線を越えちゃってますが、かのんの先輩大好きっぷりが恥ずかしいくらいリアルで、こういうタイプの子によくある「誰かを好きな自分に酔ってる感」が全くなくとにかく必死なところがすごく共感できます。

人を好きになると誰しも傍から見たらちょっとヤバい行動をとってたりするんだろうなあと。

 

SFサイドでは「ゼリー」と呼ばれるエイリアンと堺先輩が所属する特殊部隊が戦闘しますが、そこで負傷者が「修繕」をすると腕がなくなろうが頭の一部が吹っ飛ぼうが綺麗に元通りに。

この魔法のような修繕ですが、やはりリスクが伴うようでその人の食の好みや人格などが少しずつ変わってしまうらしいです。

 

この先輩の変わっていく様がいろんな意味でドキッとする。

肉嫌いで全く食べなかったのに平然と目の前でハンバーガーを貪っていたり、性格も妙に強引で積極的になってたり、あったはずのホクロがなくなってたり...

カノンにとって高校の頃からずーっと一途に思い続けていた先輩が「修繕」をする度にどんどん知らない人になっていく…

なんかこれ読んでいてちょっとしたホラーだなと思ってしまった。

 

それにしても修繕はどういう仕組みなんだろう。

顔半分が無くなっても何もなかったかのように綺麗に治ってるので…他の誰かの身体の一部をくっ付けたりしてるんでしょうか…それで他人の人格とか組み込まれるようになっているとか……そういう話じゃないか。

 

 

不倫漫画なのでかのんと先輩が逢引きしているのを知って奥さんが黙っているわけもなく…

かのんから着信がきた堺先輩のスマホをコーヒーにミルクを入れるがごとく味噌汁にin…しちゃうような奥さん、初穂。

これ一番怖いタイプの人だ…と思ったら過去回想でかのんとそっくりな性格でびっくり。奥さん曰く堺先輩は「自分の言葉で一喜一憂するような立場の低い女が好き」らしいですが…これでまた先輩の真意がよくわからなくなりました。

修繕のせいで浮気性になってしまったのか、かのんの好意が単純に心地良いのか、それとも自分が変わっていないという証が欲しいのか…

あげくの果てのカノン(2) (ビッグコミックス)

あげくの果てのカノン(2) (ビッグコミックス)

 

この漫画は不倫漫画なので奥さんのお怒り描写など勿論ドロドロしている部分もあるんですが、絵柄のせいか不思議とさわやかさもあるんですよね。

カノンが先輩の一挙一動にドキドキしているところは普通に少女漫画のようで可愛いんです。

SF要素があることで色んな謎が散りばめられていて、ゼリーとは?地下とは?修繕とは?

と今後の展開が純粋に気になる面白さがあるので不倫というテーマでも重くなりすぎないんだと思います。

「SF×不倫」、新鮮で面白かったです。

 

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「コオリオニ」 梶本レイカ 感想 すごいの一言しかない…

今まで読んできたblが全部生ぬるく感じるほどすごい漫画に出会ってしまった...

読後は体に力が入らずしばし放心状態…

サスペンスbl漫画と謳われていますがそんなものでは片付かない作品でした。

これを読んで上手くまとまった感想なんてまず書けませんが、とりあえず感想。

 

 

 以下ネタバレ注意

コオリオニ(上) (BABYコミックス)

コオリオニ(上) (BABYコミックス)

 
コオリオニ(下) (BABYコミックス)

コオリオニ(下) (BABYコミックス)

 

 

 “ヤバい男達が組んだ"

1990年代、北海道――…全国を震撼させる警察の不祥事が幕を開ける。

1990年代、警察庁は相次ぐ拳銃事件の対策として全国的な銃器摘発キャンペーンを始める。全国の警察は厳しいノルマを設けられ、それをこなす為に警察がヤクザと手を組むという点数稼ぎのデキレースが横行した。そんな中にエースと呼ばれる男・鬼戸圭輔(きど けいすけ)はいた。彼は何人もの犯罪者を情報提供者として飼い、北海道警察の中で一際多くの拳銃を"摘発"していった。そして彼は自分の運命である誠凛会(せいりんかい)の幹部・八敷 翔(やしき しょう)に出逢ってしまう。より大きい山を当てるために鬼戸は柏組(かしわぐみ)の武器庫に目を付け、八敷を潜入捜査に誘う。八敷は薬の密輸入を目溢しすることを条件に鬼戸と組む。二人は甘美な成功を期待して潜入捜査に乗り込むが――。

 

まず刑事の鬼戸。大体の刑事×ヤクザblのようにやんちゃしてるヤクザのなだめ役かと思ったらとんでもない。人はバンバン殺すし生きてて辛そうだし、社会に適合しようとして空回っちゃうような足元のおぼつかない人でした。事あるごとに彼女の八敷を殺そうとするので終始ハラハラしてました。

八敷。こちらは普通にヤバイ人でした。ヤクザ連中にもお姫様なんて呼ばれる美女ながらやることは残忍非道、えげつなすぎです。足の指ほとんど切り落とされたりそれを食べさせられたりやられる事もとんでもないですけどね…。

しかもあのキレーな見た目で毛皮着てヒール履いて「キャー」とか言っちゃうんですよ…溢れ出る人妻感…

 

作中でも言われてましたが罪悪感のかけらもなく自分はあくまでもかわいそうな被害者だと思ってるところがちょっとサイコパスっぽいです。

 

 

鬼戸は銃器摘発のノルマのために情報提供を求めて八敷に近づき、八敷は鬼戸が自分を殺してくれるのではないかと期待して近づく。

この2人が腹の探り合いをしながら惹かれ合っていく様に目が離せませんでした。

八敷も鬼戸も幼い頃から家庭環境は最悪。普通というものがわからず、互いに闇を抱えた死にたがりなので仲良くセックスしてると思ったら心の中は憎悪に燃えていたり、次の瞬間殺そうとしていたり...とにかく不安定なカップル。

次のページで誰が誰を裏切るか、誰がこの世から消えているか全く先が読めないので読んでいてずっとハラハラしっぱなしでした。

正直自分はメインの2人ですら最後の最後まで信用できませんでした...

 

この漫画はスポットが当たる人物によってその人の印象がガラッと変わるところが面白いです。特に好きだったのは佐伯という八敷にとって幼い頃からの兄貴分的な男の過去回想。

それまで八敷が語っていた人物像とはまったく違い、何考えてるか良く分からないただのクズという印象だった佐伯がとんでもなく心の内ではもがいてあがいて苦しんでました。

 

佐伯は、堕ちるところまで堕ちてもそれを誰のせいにもしない。ちゃんと自分で選んだ道だと振り返る冷静さを持っているし、自分の母親に「今日からグレるわ」と宣言してからグレるような男。

でもそんな「意外とフツウ」な自分を思い知るほどうまくヤクザとして立ち回れる八敷との差を感じて自分の存在価値が分からなくなっていく…。

八敷は佐伯の尻拭いをする事で駄目な男の面倒を見つつヤクザという組織の役にも立ち存在価値を一挙に得る。でもそれを見ている佐伯は自分だけ「城の外」に締め出されるようなどうしようもない疎外感を感じてしまう。

自分は幼い頃父親に犯られていた八敷を救ってコオリを溶いたのに、なぜお前は俺をここから救い出してくれないのかと。コオリを溶いてくれないのかと。

普通でもなく異常でもない、それでは自分は一体何者で居場所はどこにあるのかと苦しむ佐伯が本当に辛くて辛くて思わずうるっときてしまいました...

八敷は佐伯にとって触れたもの全てを食い尽す悪魔でありながら、俺の希望、俺のコオリの女王様でもあるという...

佐伯は八敷に殺されることを悟っていましたが、ずっと前から愛しい八敷に殺されることを望んでいたのかなあと感じました。

 

私は「かわいそうな自分を楽しんでる受け」が大好物なので八敷は本当にツボでした。ヤクザの中では木場さんが散々八敷をいたぶってくれるので好きです。ああいう飄々としたイっちゃってるインテリヤクザがいると一気に華やかになって良い。

 

 この漫画に普通の人は一人も出てきません。もれなく全員が普通がどういうことか分からない世間のはみ出し者。なので正直彼らの思考や言動はほとんど理解できないですが、感情だけはこれでもかというくらいガンガン心に響いて訴えかけられました。もういろんな感情が自分の中に入ってきすぎて上下巻読んだあとには燃え尽きて、かなり疲れました。

今後再読するときも、「さあ読むぞ」と気合を入れなければ読めそうにない作品です。

コオリオニは以前から気になっていたんですが、電子化されていないので試し読みができず。なので色んな方々の「すごいの一言に尽きる」「blの枠に収まらない作品」という熱烈なレビューのみを頼りに前情報一切なしで読みました。

結果、本当にすごかった...

漫画を読んでいることを忘れる漫画です。映画や小説ともまた違う...

いろんな人間の深~い部分をより近くで見せられているような感じでした。

 

普段blを読む読まないに関わらず面白いと思います。梶本レイカ先生、一気に大ファンになりました。今後間違いなく作家買いします。

 

バンチで連載中の「悪魔を憐れむ歌」もWebで読んできましたがこちらもまたすごい。コミックス発売が楽しみ。

 

mominokirin.hatenablog.com

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