河原和音「先生!」感想 素晴らしい当て馬がいた

JKと先生の卒業までの恋愛を描いた少女漫画。

理想の先生×生徒漫画すぎて興奮気味に読んでいたところ文庫版の終盤で突如とんでもない当て馬が出てきて、この人がちょっと自分の中で処理が追いつかないほどの良キャラだった...。

 

 

以下ネタバレ含みます。

 

 島田響は高校二年生。ある日、友達から頼まれたラブレターを間違えて伊藤先生の下駄箱に入れてしまったことから運命は動き出した。今まで恋をしたことがない響だが、女ギライでクールだけど本当は優しい伊藤先生に徐々に惹かれていき…?

 

伊藤貢作(先生)は黒髪+メガネ+高身長で煙草の似合う25歳。

女子に「あなたの思う理想の先生像は?」とアンケートをとって集計結果を全て取り入れたんじゃないかと思うくらい素敵で、1ページ1ページが眼福。

基本女子、というか人間にあまり興味がなさそうに見えるのに意外と生徒思いだったり、ヒロインの響のことになると教師という立場を押して大胆な行動に出がちなのもまた良い。

響と先生がくっついてはまた離れを繰り返ししながら話は進んでいくのですが、9巻でこの理想の塊伊藤先生に引けをとらない、とある当て馬が登場します。

彼こそ響が弓道部関係で知り合う爽やかイケメン藤岡勇輔で、歴史好きで妙に浮世離れした高校生らしからぬ雰囲気漂うところが伊藤先生と瓜二つ。

響が思いがけず藤岡という「高校生版伊藤先生」に出会うことで、今まで人目を気にして響に彼氏らしいことをしてやれず負い目を感じていた先生は、響との関係を終わらせた方が良いんじゃないか...という思考になっていきます。

藤岡と関わりを持つうちに先生自身も学生時代の自分と彼を重ね、今の自分の代わりになってくれるのでは...と期待するには十分すぎる存在でした。

 

少し離れてお前が自由に考える時間をあげたい

俺以外のいろんな可能性を考えてほしいんだ

と藤岡のことを仄めかす先生。

 

先生が言ったことの意味は俺が教えてあげられるかもしれないから

先生の意思を知り響に告白する藤岡。

傷心の上ますます混乱する響に返事を迫ったり好意を押し付けてきたりせず、ただただ寄り添い普通の友達のように振舞う藤岡に、先生と似た優しさを感じる響。

自分の好きな人の好きだったところが似ている藤岡のことが、少しずつ気になり始めます。

藤岡と付き合えば響が求めていたものをいつだってくれるし、周りにバレて咎められることもない。

けれど「手、つなごうか。」と差し伸べられた手に応じようとした瞬間、先生との楽しかった思い出が逡巡し、響はその手に応えることができなかった。

それに対して藤岡は全てを悟ったような顔をして、引き潮のように静かに身を引いて、響の背中を押すんです。

最後まで優しさしかない…。

 

別れたあとに

最後までどこか冷静だったんだ

感情に流されて状況を見失うほどの熱がなかったんだ

と響に対する自身の感情を振り返ります。

先生は響が欲しいものをあげられないからと身を引き、響は先生と繋がりのなくなった毎日が辛すぎて心ここにあらず...じゃあ自分はどうすることが2人にとって一番良いのか?と常に冷静に行動を選択してきた藤岡。

そういう自分と、響や先生との感情の温度差に気がついてしまったら、もう2人の間に割って入っていくことはできなかったんでしょうね。

 

藤岡が終始「先生が響にあげたかった幸せ」のために動くのは響が好きだからというのも勿論あるけれど、それ以上に「先生の代わり」になろうという意識を強く感じました。

人の気持ちを常に優先する人だから、響に高校生らしい恋愛をさせてやれないと悩む先生のこともきっと何とかしてあげたいとどこかで思ってたんじゃないかな…

彼の言動を振り返れば振り返るほど聖人すぎて苦しい。

 

そして先生と一緒にいられなくなってボロボロの響にただ一言、「一緒にいよう」と言ってのける藤岡の寛大さ。

好きな女子がフリーになった隙に付け入ろうとか、いつまでも落ち込んでないでいい加減俺の方も見ろとか、そういう我欲を最後まで一切見せなかった。

正直彼はヒロインとキスどころか手すら繋がないので当て馬としての存在感は薄いかもしれませんが、自分の中で藤岡勇輔という人物の存在は強烈に印象に残り、ラストまで引きずるほどでした。

番外編を読める機会があれば是が非でも藤岡が恋に溺れて盲目的になる姿が見てみたい。

 

因みに最終巻の番外編では伊藤先生の学生時代の話があり、まだ眼鏡をかけていない14歳の天使が拝めるので先生好きの方にはおすすめです。