小林有吾「アオアシ」 9巻 感想

橘が望コーチに自分を試合に出さないよう直談判したり、冨樫と竹島の確執があったりと不穏な空気が流れ始めていた8巻。
9巻はそんな雰囲気が続きつつも、Bチームメンバーの過去編を通して精神的に大きな動きのある話でした。

 

以下ネタバレを含みます。

アオアシ(9) (ビッグコミックス)

アオアシ(9) (ビッグコミックス)

 

 

ついにユースに入団した時から冨樫が昇格生を毛嫌いしていた理由が明かされましたね。
どうやら小6のとき冨樫はエスペリオンジュニアの練習に参加していたらしく、そこで冨樫の「勝つためのサッカー」と、ユース生の「プロになるためのサッカー」

この両者の意識の違いを理解し合えず衝突したのが原因でした。

冨樫曰くアカデミー育ちのサッカーは「ケガをしない、プロになる、試合に勝つ」という優先順位を無意識に付けて、差し引きをしながらサッカーをやっている。そういうやつは生きるか死ぬかの試合で役に立たない。

対して黒田・竹島らユース生側はプロになることを優先したサッカーをして何が悪いという主張。

冨樫のいう「生きるか死ぬかの試合」が全くピンと来ていないところが環境の差を如実に表してますね…。
「プロになれないならその瞬間人生終わり」とか「点取りたくてサッカーしてるなんて気分は終わってんだよ」とか、小6の口から普通に出てくるのが末恐ろしい。

そして9巻は頻繁にキャラクターが口にする「弱さ」という言葉が印象的でした。

自分達は強いと信じて疑わなかった昇格生が、冨樫との対立やスランプに立ち向かう橘を通して、まだ曖昧だが確かに存在する己の弱さと向き合い外部生に少しずつ歩み寄ろうとしている…。

どちらの意見が正しいか正しくないか、ではなく、リスクを冒し着実に勝利を積み上げていく武蔵野の強さは「自分達の弱さと向き合った結果」であり、冨樫の強さもこれと同質のもの。
だから「俺は強くありたい」、「勝たなきゃ正義はねえ」というのがアシトが出した答えでした。

それにしてもこんなにレベルの高い論争を小6で…確執の大本が想像以上の根深さでした。
どちらの意見も間違ってはいないし、それを曲げることは自分の今までやってきたサッカーを否定する事に繋がるからここまで引きずってしまったんでしょうね。

アオアシはこういう細かい心理描写が入ることで後の試合の面白さが倍増するので、アシト以外の成長も予感させる武蔵野戦はものすごいことになりそう。


アシトと花の関係はアシトが鈍いせいでなかなか進展しませんね。栗林の献立の話が出ても「なんで俺に言うんだ、それ。」とか言い出す始末。
花ちゃんは栗林にせっせと献立作ってアシトを嫉妬させてサッカーどころじゃなくしてやればいいんだ…。


過去編が入って忘れてましたが、武蔵野戦は「試合の働きいかんでAチーム入りを判断する」と福田に言われたアシトにとっても大事な試合。

司令塔として活躍するアシトが待ち遠しいです。

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