小林有吾「アオアシ」10巻 感想

武蔵野戦までBチーム内でいざこざがあった分、この10巻で長い冬が終わる兆しが見えてきて興奮の連続だった…。

 

 以下ネタバレを含みます。

 

 ↓9巻感想

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アオアシ(10) (ビッグコミックス)
 

 

武蔵野のハイプレスにロングパスを繋ぐダイレクトサッカーで対抗するエスペリオン。こちらが優位な個人技術を活かした作戦で試合は一時エスペリオンのペースになりますが、「司令塔」武藤キャプテンの活躍もあり全く焦りを見せない武蔵野。


そして打倒エスペリオンと燃えていた金田ですが、その気持ちがゴール際の粘り強いプレーに表れてます。
果敢に攻める金田にパスミスからシュートチャンスを作ってしまった黒田がミスを取り返そうと自らマッチアップするも、技術は金田よりも明らかに勝っているのに、一瞬の気の緩みによって武蔵野に1点目を許すことに。

テクニックや足の速さで勝っても、武蔵野のようにリスクを冒して「勝つ」ことを目標にしてきたチームを前にすれば、こうして僅かな隙を突かれてしまう。

これまた冨樫に「ケッこれだからアカデミー育ちは」と言われそうな…


 「リスクを冒せ」という佐竹監督の言葉通り、迷いなく捨て身のサッカーをしてくる武蔵野に苦戦する中、橘がついにやってくれました。

FWとして点をとる自信を失い、次の試合に出さないでくれと直談判したにも関わらず、望コーチが自分を試合で使ってくれたことに対する感謝とその期待に応えたいという気持ちが湧き上がり、完全に火がつきます。

吹っ切れた表情でゴールに迫る橘に、何とかして点を取らせてやりたい、殻を破らせたいと必死にプレーするアシトと大友。

そんな思いを受け取りシュートを放つ瞬間、

ひとつ思い出したことがある。

という橘のモノローグが入る。

今まで自分は義経や金田のような優れたFWを見て落ち込むばかりだったが、ただひとりアシトに対しては違った。

アシトの困難に立ち向かう姿に"勇気"をもらっていた。

ゴール直前の

俺が初めて憧れた選手は、お前だよ。アシト。

これがもう最高にアツい...。

橘が焦りを感じ始めたのは、おそらく6巻辺りだと思うんですね。
まだFWだった頃のアシトに対して「あんな点の取り方もできるのか」という冨樫の発言に、ベンチから見ている橘も冷や汗をかいている。

その後得点から遠ざかり、自身を責め続けスランプに陥った時にアシトのサイドバック転向があった。そこで実に彼らしいのが、同じポジションのライバルが減ったとか試合に出られるチャンスが増えたとかそういう思考に行き着かずに、困難な状況におかれた友人が奮闘する姿と落ち込むばかりの自分とを比較して、それを素直に"憧れ"だと認めるところ。

8巻の「どうやったらお前みたいになれる?」という台詞にも滲んでいた。

だからこそ、仲間への"憧れ"を"勇気"に昇華して殻を打ち破る瞬間に、心からの感動がありました。

ゴール直後すかさず橘に覆いかぶさる選手達、無言で親指を立てる望コーチ、喜ぶというよりほっとした様子のアシト、何より自分のゴールが信じられずに感極まった橘の表情がグッときますね…ここは本当に親のような気持ちで読んでしまう…。


そしてここで佐竹監督が動きます。GK1人を残しほかの10人をすべて前に押し上げてハイプレスに来る人数を増やすという、いくら何でもリスク冒しすぎでは…?と思うくらい際どい作戦に変更。

後ろがガラ空きなのに何度もオフサイドを取られて攻めあぐね、2点目を奪われ、さらにBチームの最大の弱点を突かれて追加点を許してしまう、のか…?
というラストでした。

最後の弱点というのはサイドバックの冨樫と竹島の連携が取れていないこと。ここの確執が解消されれば金田のシュートの怖さも減るし、Bチーム全体の雰囲気が良い方向に変わると思うんですが、色んな意味で丸くなった竹島はまだしもユース生を目の敵にしてきた冨樫は和解する姿が全く想像できない…

ロッカールームから始まる10巻が今から待ち遠しいです。

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