アオアシ 11巻 感想

常々アオアシは今1番面白い漫画だと思ってましたが、11巻はさらにアオアシの中でもダントツで、この面白さに慣れてしまうのが怖いくらいだった…。

 

以下ネタバレを含みます

アオアシ(11) (ビッグコミックス)
 

 

黒田のナイスクリアで辛くも追加点を奪われることなく前半を終え、怒涛の後半開始前の控え室でも選手達の成長に繋がるドラマがありました。
エスペリオンの"穴"として付け込まれてしまった冨樫、竹島ラインのカバー役を買って出る黒田。
この3人がうまく連携するには話し合いが必須なのに、サッカーに関係ないジュニアの頃からのこだわりを捨てきれない冨樫は例によってそれを拒みます。
そんなギスギスした空気を打開すべく活躍するのが望コーチ。
前巻ラストで福田が言ってましたが、こんな状態のチームを「立て直せるのはあいつだけ」というのは望コーチのことだったんですね。
外まで言い争う声が漏れ聞こえる控え室の扉を開ける望さんの、目を閉じ覚悟を決めたような表情や、真摯に言葉を選ぶ様子から選手を思う熱い気持ちが伝わってきて、本当に1人1人と誠実に向き合っているのだなあと胸打たれました。

普段具体的な指示をほとんど出さない望さんの一歩踏み込んだコーチングを引き出した、福田との会話シーンも良かったです。
福田の「選手達は未熟だ。そして俺たちも未熟だ」「言いたいことがあれば言えばいいじゃないか」
という言葉を聞いたときに、望さんはハッと我に返ったような、驚いた反応を見せるんですね。

このシーンで、Bチームの現状に頭を悩ませていたのはコーチだって同じで、望さんも指導者として選手とどう向き合うか常に自問していたのだなあとひしひしと感じました。
普段の練習から言葉数が少ないというのも"選手が自ら考え成長していく"ためであって、これはこれでどこまで口を出すか出さないかのさじ加減が難しいのだろうなと。
選手とともに指導者の葛藤や成長まで描かれる視点の幅広さにため息が出ます。

この2人はお互いの足りない部分を補い合っている、バランスの取れた良いコンビですね。選手時代からいい関係だったっぽいもんなあ。


後半に向かうアシトを送り出す花。その様子を背後から見つめる杏里と福田、福田越しにアシトを見る望さんのこの5コマに、送り出す側の複雑な感情が見えた気がして少し切ない。
監督志望の杏里はアシトの事が気になっていて、花とアシトが良い感じなのも承知の上で、"自分はサッカーについて選手と近い目線で語り合える"という、素人の花に対して少なからずの優越感があったと思うんです。
首振りの練習方法を教えたのも自分だし、"選手の力になっている"という指導者を志す人間として最上の喜びも感じていたんじゃないでしょうか。

それでも試合直前に「一言もらっていいか?」と求められるのは花で、「いっちょ行ってくるか!」と気合いを注入できるのも彼女だった。サッカー云々ではなく敵わないものがあると杏里が気づいたのがこのシーンなのかな…と、ついラブコメ好きとしては妄想が働きました。

福田についてはアシトと自分の現役時代を重ねているのかも、とか、106話望さんの「私はお前のように強くないからな、福田」も含めてこのたった5コマで色々と考えてしまった。2人の過去はぜひスピンオフで見てみたいです。


始まる武蔵野戦後半は序盤から完全にエスペリオンのペース。ここからは鳥肌ノンストップ。
アシトが台風の目となり"ダイアゴナルラン"で敵も味方も引っかき回し、コーチングで周りを動かす能力が完全に覚醒します。
何よりアシトに翻弄されながらもみんながサッカーを純粋に楽しんでいて、「一発かましてやろうぜ!」感がすごい。読む側もただただ楽しい。
今までは大友、黒田、橘あたりを動かすだけだったのがもはやBチーム全体をアシトが掌握していき、あのクールな朝利までいつもの自分では考えられないような突飛なプレーを引き出されて興奮が止まらないといった様子…

そしてアシトからのパスに込められたメッセージを受け取りそれを汲み取る黒田。
この場面が、4巻の紅白戦で黒田がイラつきながらアシトに言った
「パスからメッセージが伝わらないの?」
とつながって、ようやくあの時の黒田の言葉の意味を理解します。
またアシトの中でサッカーが広がった。
紅白戦ではFWとして自分が点をとることしか頭になく「何が分からんのかもわからん!」だったのに、成長したなあ…。

そんな興奮続きの試合中にうっかり泣きそうになるのが冨樫の回想シーン。
またここでも望さんに感動させられてしまった。

これまでの試合の中で、冨樫のファウルがかさんでも「相手のレベルに合わせる必要はない」と彼のフィジカルの強さを認め、目立つゴールシーン以上に「献身的な守備だった」と褒め称えてくれる望さん。

投げかけられる言葉の数々があまりにも冨樫慶司に対する至上の”肯定”で感銘を受けたので、ちょっと挙げてみると

「評価する。よく我慢している。」
「お前の守備力あってのチームだ。」
「低いレベルに下りていく必要などない。」
「お前は、今のままでいい。」

 

なにこれ泣く...これを、あまり多くを語らない鉄仮面コーチが真っ直ぐな目で言うんですよ…2人の間にこんな感動エピソードがあったとは...
選手が口を揃えて「望さんが言うなら...」とやたらと信頼を寄せる理由がよくわかりました。
今まで素行の悪さのせいで自分の実力を満足に評価されず、どこのチームでも居心地の悪さを感じていた冨樫が一番欲しくて誰からも貰えなかった言葉だろうなあ。

「あのオッチャンを困らせたくねぇ」 から大嫌いな竹島と連携するのもヤンキー冨樫らしいというか、自分を信じてくれた人を裏切りたくないのだなあと。コーチと選手の信頼関係が見えてすごく良かったです。

動力を得た冨樫、竹島、黒田の連携も素晴らしかった。これまでユースとそうでない者の意識の差、プライドのぶつかり合いで揉めにもめましたが、「相手になりきってプレーする」ことで互いの力を認め、意図を汲み取り、チームの"穴"が"鉄壁の守備"に変化するさまが最高でした。
相変わらずいがみ合いながらもそれぞれの距離の詰め方に個性が滲むのが微笑ましい。小学生の頃から共にサッカーをやってきた昇格生と外部生のわだかまりは簡単に解けるようなものではないだろうし、今までの長い道のりがあったからこそ、これほどまでに盛り上がったのだと思います。

勢いの止まらないエスペリオンに前半あれだけ気合いに満ちていた金田も
「俺はやっぱり、偽物なのか...」
と一瞬セレクションの時のように諦めかけますが、キャプテン武藤の言葉で持ち直して最後までどちらも戦意を失わずに戦い抜けて本当によかったです。
佐竹監督もいるし武蔵野は何度でも這い上がってくると思う。

チームを勝利に導いたアシトは黒田冨樫大友の3人と共に念願のAチーム入りを果たしました。
ついに…義経や栗林や、そしてあの阿久津もいる化け物の巣窟に…

おそらくまた何度も挫折を繰り返すのでしょうが、今までに感じた圧倒的な差が少しでも縮まっていることを期待したいです。

濃かったなあ…武蔵野戦。

 

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