あげくの果てのカノン 4巻 好きな人は"知らない人"になってしまった

「こうなることは分かっていたのに。」
ついにこの時がやって来てしまったか…という感じです。

 

以下4巻ネタバレを含みます。

 ↓3巻感想

mominokirin.hatenablog.com

先輩は修繕をして変わってしまった。
それも今までのように食の好みやホクロだけではなく、かのんを好きだと言ったことも、キスしたことも束の間の逃避行の思い出も全て記憶しながら、その気持ちはもう今の宗介の中で噛み合わなくなってしまっていた。

かのんが浸る永遠の愛なんて所詮は理想論だと、いずれどちらかの熱の冷める日が訪れるだろうと思っていたのに、それでも先輩とかのんがキャバクラで会うシーンはゼリーに内臓をえぐられたように苦しい。

宗介がいっそのこと修繕と一緒に今までの思い出を全部忘れてくれていたらまだ救いがあるのに、記憶を残してかのんを好きだった感情だけそっくり消えてしまっていた。

目の前にいるのは確かにずっと好きだったはずの先輩なのに、自分の求めている先輩はどこにもいない。

触れることすら許されない。

冷たい態度の宗介に耐えられず、何も分からないふりをしてやけ酒をあおるかのんが目を背けたくなるほど痛々しくて、皮肉なことにこうなってみて初めて初穂の「今度はあなたなのね。」という言葉がグサグサと刺さる。

ゼリーを脱走させた初穂は「宗介との未来のためにならずとも」、自分の使命を全うするために正気に戻ったけれど、9年前から毎日が先輩づくしで先輩がすべてだったかのんはこの先どうやって生きていくんだろう。

そして新キャラの松木平。4巻は彼に救われました。
眼鏡を外せば先輩と瓜二つなのに、理屈っぽくて、ドジっ子で、奥手で、喋れば喋るほど先輩とは違う人間だと思わせる人。

「変化」に翻弄され続けるかのんに「変わることは適応すること」で、人間はそうやって生きていくものだと目の覚める言葉を次々に投げかけてくる。

きっと今まで色んなことに上手く適応しながら生きてきたであろう松木平と、先輩が好きだという変わらぬ気持ちを持ち続けてきたかのんはどんな化学変化を起こすのか。

煙草を吸う横顔や伏し目がちな瞳にドキドキしながら、ほとんどの人間ならば大好きな人と同じ顔をした松木平に一瞬で惹かれて、彼の言う「未来のある恋愛」が始まるのだろうけど、宗介に見限られて思考が今まで以上におかしな方向に向かっているかのんにはまだまだ松木平の入り込む余地はなさそうな感じでした。

変化していく宗介も忘れてしまった感情に苦しみ、直前まで早くかのんに会いたいと思いながらゼリーと闘っていたのに、修繕後はその理由が分からない。
4巻はかのん以上に自身の心変わりにどこかで違和感が拭いきれない宗介を見ているのが本当に辛くて、その違和感すらも曖昧なものにしてしまうこの作中世界の仕組みがますます恐ろしくなった。

戦闘のたびに大切だったはずの感情を失ってしまうけれど、宗介にとっては初穂との結婚も、かのんとの純真な恋も、初めて修繕によって変わってしまった母親への想いも 

本当なんだ。本当だったんだ。


修繕はあまりにも酷だ…


雨に打たれ増殖を続けるゼリーと世界は、これからどうなってしまうのか。
 
どんな選択をしようがどれだけの人を傷つけようが、あげくの果てまで行き着いたかのんはどんな姿になっているのか、見届けたい。